0.はじめに
音楽あるいは、音は自律神経や精神状態に影響を及ぼすことが、近年の研究で明らかになってきています。
私も、うつ病にかかっていた時に音楽を聴いたりしていたのですが、あまり効果の実感がわきませんでした。
しかし、現在は音楽を聴くだけでもセロトニンの分泌が実感できるほどになり、音楽の精神に与える影響の大きさを実感しています。
自律神経が整っているときと、整っていない時では明らかに色々な面で感じ方に差があるようです。
自己催眠療法では、特に音楽もなくても効果は実感できるのですが、これにリラックスできる音楽を追加してみたらどうだろうと思い付き、催眠音声を制作して何度も思考錯誤を繰り返しているうちに、音声を聞いているだけでもとても気持ちがよくなることを発見しました。
セロトニンは脳幹にある、縫線核から分泌されるのですが、呼吸法を利用することでセロトニンが分泌させることができます。しかし、呼吸法を利用せずともなぜイメージだけで出せるのかはちょっと不明です。誰も開拓したことのない分野なので、あれこれとまだまだ研究中です。
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そんな、音声についていろいろと調べていると、
「1/fゆらぎ」
といったものを見つけました。
「1/fゆらぎにかんする国際シンポジウム」といったものが40年にわたって開催され、長年にわたって研究され続けているようです。
武者利光(東京理科大学教授、 東京工業大学名誉教授)という方が第一人者で名付け親のようで、自然界の1/fゆらぎ音を聴くと脳内がα波の状態になり、リラックスできるのだという。
1.1/fゆらぎはどういったものに含まれているのか?
今では、ヒーリングミュジーックにも使われ、名曲と言われるものや、さらには、結晶の格子振動、地球の自転、自然現象、生物など多岐に及んで、1/fゆらぎを含んでいると言われています。
具体例でいうと、ろうそくの炎の揺れ、人の心拍の間隔、電車の揺れ、小川のせせらぎ、目の動き方、木漏れ日、蛍の光り方、星の輝き、ミジンコの動き、蝶々の揺れといったものです。
また、手作りのものにも含まれ、ビルや大量製品といった人工物には存在しないそうです。
2.スペクトルとは
1/fゆらぎは、イメージ的には
「何らかがゆらゆらと揺らいで、人の精神状態に安定効果をもたらす」
といったイメージでしょうか。
1/fゆらぎについて調べると、
「パワースペクトル密度が周波数fに反比例するゆらぎ」
とあります。
何も知らない人にとっては、いまいちピンとこないと思います。
ここでは、まずスペクトルについて簡単に説明していきます。
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私達が、自然現象からデータを得るには、数字に置き換える必要があります。
例えば、音の特性を測定するときは、マイクで音を受けて取り組んで電気信号に変換し数値化して測定します。
横軸に時間、縦軸に振幅をとってグラフにしていくと、複雑な波形になります。
しかし、複雑な波形のままだと取扱いが難しく上手く解析できません。
波形のグラフはこのような複雑なものだけでなく、もっと単純な波形も存在します。
高校1年生で習う、正弦波sin・余弦波cosです。
例えば、sin2tというグラフでは、周波数が2Hz(1秒間に2回振動)で、振幅は±1の範囲で規則正しく動く波のグラフになります。
得られた複雑なグラフも、
sint,sin2t,sin3t,・・・sinnt
cost,cos2t,cos3t・・・cosnt
といった単純な波の合成でできています。
複雑な波は、sintが1個、sin2tが2個(2倍),sin3tが4個(4倍)を足し合わせて作った波で、
f(t)=sint+2sin2t+4sin3t
といった単純な波の合成波でできています。

一方、逆に、複雑な波を単純な波に分解して、波の特性を知る数学的手法を「フーリエ変換」といいます。
この複雑な波の式だと、
・sintの波の振幅1
・sin2tの波の振幅2
・sin3tの振幅4
となりますが、横軸に周波数、縦軸にその周波数の強度をとって、棒グラフにしたものを
「スペクトル(パワースペクトル)」
といいます。
(実際には周波数は整数以外も含まれるため、連続したグラフで表されます。)
各々の周波数の波がパワー全体に寄与している割合を示す量”、パワースペクトル密度(PSD;Power Spectral Density)と呼ばれる量です。

3.Ⅰ/fゆらぎとは
パワーPは数式で
P=Ⅰ/fλ
であらわすことができます。
λは指数で、特に「λ=1のときを1/fゆらぎ」といいます。
Pは反比例のグラフとなりますが、両軸を対数グラフにすると、傾きがー1(角度45度)になります。
感覚的に1/fゆらぎとは、ざっくり
「低周波に集中させた音」
といった感じですね。

4.カラードノイズ
深夜放送のテレビが終了した後、
「ザ―――」
と流れる音はノイズと呼ばれます。
電子機器などでは、このノイズは発生することは好ましくないのですが、1/fゆらぎはこのノイズから発見されたと言われています。
この
「ザ―――」
とする音も雑音ですが、様々なスペクトルがあるようです。
周波数に関わらず常に一定のスペクトルを
「ホワイトノイズ」
平坦でないものは
「カラードノイズ」
と呼ばれています。
光も音も、波でできていますが、光の場合は、周波数によって色が異なります。
低周波の光は「赤」、高周波は「青」系統になります。
可視光線をプリズムに通すと、赤、燈、黄色、緑、青、紫といった順番に色が分解しますが、その周波数と色に対応させて、ノイズにもブラウン(レッド)、ピンク、ブルー、パープルといった名称がつけられました。(ただし、光と音の周波数は同じではありません)
光では、赤系統はリラクゼーション効果、青系統はブルーライトのように覚醒作用があるように、ノイズにも似たような効果があるようです。
カラードノイズの音声はこちらで聞けます。
5.1/fゆらぎに対する疑問点
「1/fゆらぎ」に対して、色々調べてみましたが、疑問点があります。
フーリエ変換するときは、計算時間を短縮するため、高速フーリエ変換(FFT)といった手法でアルゴリズムで計算させるのですが、まず音声を区間ごとにデータを分け、それぞれスペクトルを算出し、最終的に重ねて一つのスペクトルにします。
ノイズのような、あまり変化のない音声ならともかく、クラシックや声入り音楽は、データを並び替えても最終的には同じスペクトルになるので、これが同じリラクゼーション効果を与えるのか疑問です。並び替えた音楽だと、かなりリズムが狂うので、逆に落ち着かない・・といったことになるのではないかと思いました。
とはいえ、ノイズ系は聞いていると、かなり眠気を誘うので、リラクゼーション効果はあるのかなと実感しています。
