自閉症スペクトラム(ASD)の成り立ちの歴史 ~精神障害について~

発達障害

0.はじめに

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本来「アスペルガー症候群」、自閉症スペクトラム(ASD)とは「自閉症」とされていますが、受動型、孤立型、積極奇異型等々多くのタイプがあり、「自閉症」のイメージとはかけ離れたものまで対象となっています。
それは、まるで「空気が読めない変わった人達」といったイメージを感じます。
はたして
「自閉症の定義とはなんなのだろうか?」
と疑問に感じ、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラムが誕生するまでの歴史を調べてみることにしました。

Ⅰ章 自閉症とアスペルガー症候群の誕生の歴史

Ⅰ-1.レオ・カナー氏による自閉症の発見

自閉症の症状は古くから存在し、認識されるようになったのはアメリカの児童精神科医のレオ・カナー氏が「早期幼児自閉症」として報告したのが最初です。
カナー氏は、「聡明な容貌・常同行動・高い記憶力・機械操作の愛好」などの特異な症状をもつ子供の11例を報告し、統合失調の陰性症状のようなものが早期に発現したものを「自閉症」と考えます。
これが医学上の自閉症の歴史の始まりになります。

カナー氏は自閉症に原因は後天的なものでなく、「親の愛情不足による心因性による症状」と考えました。そして自閉症児の母親を「冷蔵庫マザー」と呼び、愛情を持って育てれば治ると考えていました。 
ー氏の説いた自閉症タイプは「カナー症候群」と呼ばれます。
※毒親という言葉はこの頃はできていません。( 1989年スーザン・フォワー 氏によって作られた)

Ⅰ-2.ハンス・アスペルガー氏による自閉症論文発表

レオ・カナー氏が「早期幼児自閉症」を報告した、ほぼ同時期の1944年、ウィーン大学病院で小児科医として働いていたハンス・アスペルガー氏は、ドイツとオーストリアの合併による「ナチスの優性政策や安楽死に関わる問題」(優性学の考えに基づき、障害児は安楽死にすること)に配慮する形で「自閉性精神病質」を発表します。
(まだこの頃は「アスペルガー症候群」として広まっていません。)
アスペルガー氏は、これらの子供達を、自閉的精神病質(オーティスティッシェプシコパーテン)と呼び、社会的に問題を起こすも知的には優れた精神病質であって精神病ではないこと、こだわりを生かせて有能さを発揮できれば就労可能であることを強調しています。
また、「好適でない環境と教育の下では、状況が精神病に近接する程度の病理を有する自閉症を創り得る」と記しているようです。
また、現代では一般に「アスペルガー症候群」は知的障害を伴わない自閉症と捉えられていますが、アスペルガー氏は知的障害については言及していません。これは、後にアスペルガー症候群を広めたローナ―・ウィング女史の解釈によるものです)
アスペルガー氏の関わった子供の自閉症の特徴として、下記のような言葉で表現されており、あたかもロボットのようなイメージがあります。

高機能発達障碍

しかし、自閉症を提唱したカナーはユダヤ人で、ナチスに母と同胞を殺された経緯もあり、ナチス側のアスペルガー氏に嫌悪感を抱いていたことや、戦後、米英の研究者達はアスペルガー氏の論文を無視していたこともあり、戦後世間で知られることはありませんでした。

ハンス・アスペルガー

Ⅰ-3.自閉症の「毒親説の広まり」とローナ・ウィングの反抗

シカゴ大学のブルーノ・ベッテルハイム氏は、カナーの唱えた「冷凍庫マザー」理論を広め、1950年~60年代に自閉症は親の愛情不足であると主張し、自閉症児の母親たちは「冷蔵庫マザー」のレッテルを貼られ、社会的な非難、自責の念、罪悪感に悩まされることになります。

そんな風潮の中、イギリスの精神科医であり、自閉症の娘を持つローナ―・ウィング女史は1944年に書かれたアスペルガーの書いた論文「自閉性精神病質」を発見します。
ウィング女史はこの論文を元にして「アスペルガー症候群」として提唱し自閉症は先天的なものであって、親の育成歴によらないものであることを主張し世に広めていくことになります。
「アスペルガー症候群」は、発見者アスペルガー氏によって広められたと思われがちですが、実は、ウィング女史の手によって広められたものになります。
実際にアスペルガー症候群が世間に広まるのはまだ先のことになります。

Ⅰ-4.「アスペルガー症候群」の認知の広がり   ~カナー型とアスペルガー型の対立~

「アスペルガー症候群」がウィング女史によって認知されるようになると、1960年代、カナー型とアスペルガー型の両方の研究が日本で検討され、比較論争が始まります。
1965年、日本児童精神医学会はアスペルガー氏を日本に直接招き、特別講演をしてもらうよう要請します。
そのとき、アスペルガー氏はカナー型とアスペルガー型は別物であるので分けて考えてといったようです。
(1982年公刊の論文では、カナー型の自閉症にもかなりのページ数を割き、「同じ自閉症という連続帯で括られはするが、カナー型とアスペルガー型は別の病態(量の差が大きすぎると質の違いになる(105p)という信念が記されている。)

ところが、この後学園紛争が起こります。
学会内ではアスペルガー派がでていき、カナー派が独占することになり、アスペルガー症候群は一時期に忘れ去られることになります。
そして、アスペルガー氏は1980年この世を去ります・・。 

アスペルガー氏が亡くなった翌年の1981年、ローナ・ウイング女史が「アスペルガー症候群」を大きく取り上げてから認知されていくようになります。
しかし、それとは裏腹に、ウィング女史によって広められた「アスペルガー症候群」はアスペルガー氏の提唱したものとは別物に変貌していくことになるのでした。
この差し替えられた「アスペルガー症候群」は後にDSMへ盛り込まれ、「自閉症スペクトラム症」へと変化していきます。

1994年
DSM-Ⅳの広汎性発達障害にアスペルガー障害として採用される。

2013年
DSM-5 自閉症スペクトラム症(ASD)

Ⅱ章:変貌していく「アスペルガー症候群」~ウィングの野望~

1981年に、ローナ―ウィング女史がアスペルガー症候群を大きく取り上げた理由には、大きな別の背景があると言われています。
ウィング女史は、自閉症の子供の母親であり、自閉症は親の養育に影響しているという風潮を払拭させたいため、その啓蒙活動にも力を注いでいました。
当時は、カナータイプの自閉症が「自閉症」として扱われていましたが、類似した特徴をもつ子供にも拡大し、支援の機会を与えたいという目的があったといいます。
ウィング女史は、自閉症の診断基準(広汎性発達障害の概念の確立)や自閉症スペクトラムの概念などを提唱していきますが、結果として、自閉症と診断される子供が増大する結果を招き、社会的混乱や論争を引き起すことになります。

Ⅱ-1 DSM-IVへの採用

1994年DSM-IVが出版されますが、ウィングの働きかけもあり、広汎性発達障害(PDD)の中に「アスペルガー障害」として取り入れられます。
広汎性発達障害は、社会性の獲得やコミュニケーション能力の獲得といった人間の基本的な機能の発達遅滞を特徴とする障害のグループで、自閉症障害、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害、レット症候群が該当していました。
ウィング女史は、PDDを独自の主観に基づいてつくりあげた「三つ組」で診断基準をつくりあげます。

・三つ組(三徴候)

三つ組

①社会性の障害
②言語的コミュニケーションの障害
③こだわり行動への固執性

・3分類化

さらに、質的要素として孤立型、受動型、積極奇異型といった奇妙な分類をつくりあげたのもウィング女史でした。(大仰型、尊大型は後で他者によってつくられたもの)

ASDの分類化

対人的無関心=孤立型
無表情で人に対しての関心がなく、呼んでも返事はなく、すれ違っても反応もなく他の人が見えてないかのような行動をする。

受動的な交流=受動型
最も少なく、最も問題行動が少ないタイプです。自分から周りと関わろうとはしないのですが、他の人が関わってきた場合は嫌がらない。

積極奇異型
周りの人と積極的に関わろうとはするのですが、自分本位に接し一方的な会話を延々とするので周りから引かれてしまう事も多い。

本来なら「自閉」という言葉は孤立型をイメージしますが、受動型、積極奇異型といった分類をつくってしまったため、「自閉症ではなくなった」と指摘する学者も多いようです。
ウィング女史はこれらの徴候さえあれば、知的レベルや発症年齢も問わないとした為、自閉症該当率は4倍強まで増える結果を招くことになります。
 

対人交流の障害に関しては、その質として、
「対人的無関心=孤立型」、「受動的な交流=受動型」、
「積極的だが奇妙な交流=奇異型」の3つを挙げている。
(Wing&Gould 1979=1998: 62┡63
つまり、自閉症の対人交流は、
「自閉」という言葉から直で連想される「孤立型」だけでなく、
「受動型」や「奇異型」をも類型として含んでいる。
その結果、自閉症はウィングの三つ組基準によって 4 倍強までに増えた。
石坂は「自閉症といわれる状態が、実は『自閉症』ではな」くなったのだと述べる(石坂2008: 173
母親ウィングの言説は、自閉症概念が 
「個人の主観的印象」
である自閉性に依拠して範疇化されたものであり、しかもその「主観的印象」は自閉を
「自らに閉じこもる」
「孤立している」
「コミュニケーションの意志がない」
「情緒的接触に乏しい」
とみている以上、明らかに誤っており、自閉症概念をその根底においてとらえかえす必要があることを告げているからである。つまり、自閉症概念はその内実においても解体されねばならない対象となったのである。
(小澤 1984→2007: 555)
小澤はそのころのウィングの論に、母親性と学者性の二重性を見てとる。そして、それら両者はお互いに支えあってはいるものの、結果として自閉症概念そのものは無意味と化していることを鋭く指摘する。

・元祖アスペルガー型は無視される

元祖アスペルガー氏の定義した自閉症の定義では、「ロボット」のようなイメージで、「自閉性精神病質」という、パーソナリティ障害と考えていたようです。
高い創造性といった特性は、機械的な記憶力の良さと読み替えられ、アスペルガー氏が療育が必要と強調していた攻撃性や悪意の部分は無視されてしまいます。

・他人への愚直で不適切な近づき方
・特定のものへ激しく限定した興味の持ち方
・文法や語彙は正しくても、独り言を言うような一本通行の話し方
・相互のやりとりにならない会話
・運動協応の拙劣さ
・能力的には境界線か平均的かもしくは優秀であるのに1,2教科に限る学習の困難
・常識が著しく欠けている
・3歳を過ぎるまで、あるいは就学まで両親は子供の異常に気づかない

・アスペルガー症候群と先天性(脳機能障害による)の関係

現在の「アスペルガー症候群」、「自閉症スペクトラム(ASD)」は
先天的なもの
とされ、育成歴は関係ないとされていますが、そう定義づけされたのもローナ・ウィング女史によるものです。
1960年代に入り、イギリス・ロンドンのモズレー病院の小児精神科医であったラターと、彼をリーダーとする「モズレー学派」と呼ばれる研究者たちが、カナーの説いた自閉症は親の養育による「冷凍庫マザー論」の誤りを正す学説を1994年に発表します。

ラターは心因論説に代わる説として、脳機能の障害によって起こる
言語認知障害説」を打ち立てます。
これは、脳の先天的な脳機能の障害によって言語や認知の機能といった1次障害が起こり、2次障害として自閉症が引き起こされるといった仮説です。
しかし、研究が進むにつれていくと、この「言語認知障害説」では説明できない所見も増えていき、否定されていくことになります。
とはいえ、否定されたのは1次障害の部分であって、脳機能の障害によって引き起こされるという説は否定されませんでした。
1981年にウィング女史が「アスペルガー症候群」を紹介するときに、この脳機能障害説を結び付けたことが、
「ASD(アスペルガー症候群)は脳機能障害によっておこる」
という考えになっています。

Ⅱ-2.自閉症スペクトラムの概念化

1981年以前の自閉症は、カナータイプのものとされていましたが、90年代になると、アスペルガー型とカナー型でもないその中間にある特性をもつ患者もいたため、スペクトラム(連続体)と名付けました。
ウィング女史は「アスペルガー症候群」の提唱をした後も、「自閉症スペクトラム」概念の提唱します。

Ⅱ-3 DSM-5への採用

2013年 DSM-5 が出版され、知的障害の有無を問わず、知的障害のないとされる高機能PDDを包括して「自閉スペクトラム症」としてまとめられます。(このため、従来の高機能PDDは、「知的障害のない自閉スペクトラム症」のくくりとして捉えられる形となります)。
また、「三つ組」のコミュニケーションの障害と社会性の障害は一つにまとめられ、2つの診断軸に変更されました。

ウィング女史のつくりあげた自閉症スペクトラムは、元祖アスペルガーのものとはかけ離れたものになってしまい、アスペルガー症候群というよりも「ウィング症候群」といったほうがいいのかもしれません。
しかし、近年のtwitterやブログを見ると明らかですが、発達障害、精神疾患を抱えている人のほとんどが毒親、機能不全家庭であることを訴えていることから、「先天的」という考え方は崩壊しているといってもいいのではないかと思います。

次の記事

参照HP

自閉症の定義における「社会」概念の変遷について

元祖アスペルガー型の自閉症

人々を自閉症とみなす社会――自閉症スペクトラム概念の拡大を考える井出草平 / 社会学

アスペルガーとはどんな人物だったのか?

かつて診断がつかない人たちがいた

1965年にハンス・アスペルガーが来日していた事実

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