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催眠の発見と歴史 ~メスメリズムから精神分析、自律訓練まで~

催眠(ヒプノセラピー)

0.はじめに

現代では娯楽的イメージの強い催眠術ですが、元は神経症治療のために開発されたものです。しかし、フロイトの広めた精神分析やコカインをはじめとする「薬物療法」を機に、催眠療法は次第に精神医療から離れていくようになります。

1.催眠状態の発見

催眠の起点となるのは18世紀後半のフランツ・アントン・メスメル(1734~1815)による「動物磁気説」と言われています。この理論は、宇宙には目にみえないガスの一種である動物磁気というものがすみずみまで浸透しており、人体はこの作用下にあり、病はこの動物磁気の減少によって生じるという考え方です。そのため、「病人には動物磁気を多く保有している人が分けてあげると治療できる」というもので、この理論は「メスメリズム」と称されるようになります。

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  フランツ・アントン・メスメル

その治療法は患者の体を手で押し付けたり、何時間も置いたりするもので、それによって患者が奇妙な感覚を覚えたり痙攣を起こしたところで治癒されたとするものです。この「メスメリズム」が後に「気功療法」と催眠との繋がりがでてきます。(気功も暗示の一種とも考えられる。)

1784年、ルイ16世のフランス政府は科学者ラボアジェをはじめとするフランス科学アカデミー委員により、この真相調査にあたらせますが、委員会は「動物磁気説」を否定し、患者の想像や思い込みによる心因的要因によるものという結論を下します。

この後、メスメルは亡命し、行動は知られなくなりますが、弟子のピュイセギュール(1751~1825)が、治療中に起こった患者の奇妙な痙攣に注目し、これを「磁気睡眠」と名付けます。治療中に、患者はこの時期睡眠中に記憶が飛び、暗示に従順である現代風でいう「変性意識(トランス)状態」を発見するのです。メスリルが催眠の起源であるといわれるのも、ピュイセギュールが発見したからこそと言えます。

    ピュイセギュール

2.催眠の精神医療での利用

その後、催眠のトランス状態を利用したメスメリズムは、イギリスの医師達の間で麻酔手術の代わりに行われるようになります。当時の手術は麻酔なしで行われていたため、トランス状態にして無痛手術を行うことは画期的なものでしたが、当時の医学会では無視されました。
トランス状態では感覚さえもコントロールされるため、手術には一種の有効な手段でしたが、誰もがトランス状態にかかるわけでなく、誘導時間にも時間がかかるため、確実、即効性のある薬物麻酔の登場により広がることはありませんでした。

イギリス医師ジェームス・ブレイド(1795~1860)はメスメリズムを研究し、催眠誘導技法の一つ凝視法を編み出し、催眠術と命名します。
ブレイドは、催眠家がいなくても催眠は可能であることを発見します。視線を一点に固定して見つめると、目が疲れてまぶたが重くなり自然に催眠にはいることを。また、「あなたは眠くなる」という言葉を被験者にかけるとこのプロセスが短縮されることも発見しました。

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   ジェームス・ブレイド

1880年代フランスのナンシーの内科医リエポール(1823~1904)と神経学者のベルネーム(1840~1919)は協力して、多くの患者に催眠療法を行い研究を深め、ベルネームは「暗示について」を文章化して発表します。その中で「催眠の基礎は暗示である」と語っています。
1884年と1886年には『暗示とその治療への適用』を二度出版してシャルコー(1825-1893)らの「サルペトリエール学派」との催眠理論対決に勝利します。これを機に二人の名声はヨーロッパ全土に広がり、2人を中心とした催眠研究グループが結成され「ナンシー学派」と呼ばれるようになります。

3.フロイトと催眠療法

精神分析を基調とする哲学の創始者とされるジークムント・フロイト(1856~1939)はフランスに渡り、シャルコーやナンシー学派のリエポールから催眠を学びます。リエポールから教わった方法には前額通利法という技法があり、これは、患者の額に手を当てて「過去のトラウマを思い出すなど」と簡単な教示を与えるものでした。このやり方を通し、フロイト自身は、催眠から遠のいていきます。

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  ジークムント・S・フロイト

後にフロイトは十四歳年上の神経科医ヨゼフ・ブロイアー(1842~1925)と親しくなり、彼からヒステリー症のアンナ・O(1859~1936)治療例を聞き興味を持つことになります。
1895年にはブロイアーとともに臨床心理学界で一番有名な症例といえる『アンナ・Oの事例』を載せた「ヒステリー研究」という本を出版します。
アンナ・O自らが(心の)煙突掃除などと名づけて自然に行いはじめたやり方を、「カタルシス法(浄化法)」と名づけて概念化し、これは現在に至るまで心理学者が症状の原因として生育歴に注目していく考え方の原点となります。

<カタルシス法>
過去のトラウマが現在の症状の原因となっていて、それを思い出し抑圧された感情を吐き出させることで症状を消失させる方法。

4.フロイトによる精神分析療法の発展と催眠療法の衰退

フロイトは「ヒステリー研究」をだした翌年の1896年から「精神分析」という言葉を用い始め、受け容れたくない不快な欲求(性欲)・記憶が『無意識の領域』に抑圧されることで神経症が発症するという仮説を唱えるようになります。
その後フロイトは催眠をやめて無意識を想定し、自由連想法を用いなが人間心理や神経症を概念化し精神分析療法を発展させていきます。

<自由連想法>
ある言葉(刺激後)をあたえると、心の中に思い浮かぶことを自由に連想し次から次に発声させることで無意識にあるものを顕在化し、神経症の元となっている抑圧された感情を発散させることで神経症を治療できるという方法。

1900年チューリッヒの精神科医カール・グスタフ・ユング(1875~1961年)
も催眠療法を行っていましたが、理由もわからないうちに治癒してしまうことに耐えられず、催眠療法を捨てフロイトの弟子となります。フロイトとユングともに、基本は自身の内面を見つめて意識構造を構築し心理学をうちたてていくようになります。
しかし、フロイトとユングの考え方の方向性にずれが生じ、ユングはフロイトの元を離れ独自理論を構築し「ユング心理学」と呼ばれるようになります。

フロイトの精神分析学が広がりを見せたのち、様々な心理療法が生み出される一方で、催眠療法自体はフロイトに拒否されたことで次第に勢力が弱まってきます。
しかし、パブロフの犬で「条件反射」を発見したイワン・パブロフ(1849~1936年)は催眠の研究を続け、この流派は後に「認知行動療法」において広義にここに分類されるようになります。

   イワン・パブロフ

5.自律訓練法の開発

1895年~1900年にかけて精神生理学的観点から催眠を研究していたオスカー・フォークトは、催眠状態が健康に有効であることを発見します。

フォークトは自己催眠を行うことで気分が和らいだり、緊張が軽くなることが分かり、これを「精神予防的休息」と命名します。

ドイツの神経科医ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツは、そのフォークトの研究結果を参考、に催眠療法を引き継ぎます。

シュルツは催眠療法を行った患者にどのような感じがしたか聞き取り調査したところ、

「手足が重くなったり温かくなったりした」

という共通点があることを発見します。

この知見を利用し、シュルツは術者でなくとも、患者自身で自己暗示を行う方法を考案し、1932年「自律訓練法」を著し有名となります。

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ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツ

6.まとめ

催眠の歴史は、18世紀後半のメスメリズムに始まり、後に精神疾患治療に利用されてきましたが、十分な効果があがっていないのが現状です。

そのため、1952年のフランスの精神科医 Delayと Deniker による抗精神病薬の発見から投薬療法が現在の主流な精神疾患治療法となっています。

当催眠療法は、催眠効果をさらに有効利用し即効性を高めた療法です。

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